映画『新聞記者』を見た感想
映画『新聞記者』を見て
映画『新聞記者』は、2019年6月に公開され第43回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞した社会派映画だ。
女性新聞記者を演じたシム・ウンギョンさんと官僚を演じた松坂桃李さんは、最優秀主演女優/男優賞を受賞されたいる。
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以下、ネタバレを含む可能性がありますので、見ていらっしゃらない方はぜひ見てからいらしてください。また、映画初心者の個人的な主観になりますことご理解ください。
印象
私が『新聞記者』を見た第一印象は、「重い」だ。
それは、具体的には次が挙げられる。
- 取り上げる話題
- 作品に流れる空気
- 計り知れない規模・組織(圧力)の大きさ
権力に対抗する女性記者の信念と権力の暗部に気づいた官僚の葛藤が、実際のニュースと絡めて政治に明るくない私でも興味深く考えさせられる映画だった。
3つの感じたこと
- 記者の進み続ける信念
- 家族の存在
- 違和感と怖さ
1.記者の進み続ける信念
東都新聞記者の吉岡(シム・ウンギョン)は、日本人の父と韓国人の母との間に生まれ、父の影響を受け日本の新聞社で働いていた。
自宅で仕事をする際、何度も目の前にあるボードを見つめる吉岡。
涙を目に浮かべても立ち止まらない真実を明らかにする正義に向かって突き進む。
過去に父を亡くした時に苦しんだ経験があり、記者としてご遺族の方を取材することに計り知れない葛藤があったはずだが、亡くなった官僚の神崎を自分の父と重ねていく。
真実を叫ぼうと大きすぎる組織に抵抗した・助けを求めた神崎の死を明らかにしようとするその信念が杉岡の心を動かしたのかもしれない。
2.家族の存在
・杉岡の妻と子供の誕生
・神崎の家族と正義
この映画はネット上では、賛否両論があった作品なのかもしれない。
右、左という議論。
だから、見る気にならないという極端な意見も目にした。
個人的には、そう考えるのも自由だと思う。ただ、見たくない人は見なくていいが見て感動したらどうだとかいうのもナンセンスのような気がするのだ。
ただどんな人にも家族がいて、その家族を守りたいという願いがあるということ。
と、同時に、一人の国民・人間としての正義があること。
正義感の強さから「死」を選ぶ理由、はたまた、自分自身を騙して正義を曲げる理由には、家族が大きくかかわってくる。
うまく言語化できないが、人間は社会的な生き物なのだ。
3.違和感と怖さ
田中哲司さん演じる内閣情報調査室の室長が隠蔽等の意思決定を行っているようにも思われる描写があった。
正直、官僚だけでなく政治家等も登場するのかと思っていたが、ほぼ登場はなかった為その意味では残念だった。
誰の指示で官僚は動いたのか。
社会派の映像作品としては踏み込んだ切り口で見た人に問題提起をしてくれている。
しかし、ある意味ではこのような問題に対して取り上げることができる今の限界が示されているようで怖いと感じた。
終わりに
まとめると、私はこの作品を見てよかったと思う。
それは、この作品は事実ではないが、事件を可視化して頂けたことで、私のような人間でも問題提起に触れる機会を得たからだ。
ラストシーンのあと、追い詰められた杉岡はどうするのか。
製作された方々はその先を私に投げかけ、考えてほしかったのではないだろうか。